T room
design by takuya yamada

ドイツ

ランゲ邸・エステルス邸

住宅
設計:ミース・ファンデル・ローエ
クレフェルド 竣工1930年

ドイツの町クレフェルドはデッセルドルフから25km程の所で、絹織物などの産業で知られた町である。ミースに設計を依頼した2人のクライアントはその絹産業のビジネスパートナであり、友人でもあったようだ。建物は閑静な住宅街に2棟は寄り添うように建っている。建物は道路からセットバックしており、2棟同じような車寄せ・薄くて白い庇・落ち着いた色の煉瓦の立面が違和感無く周囲の緑になじんでいる。一見、全く同じ形状の建物に見えるが、じっくり比較して見ていくと違いに気づく。エステルス邸は全体的に横長のボリュームが強調されているのに対しランゲ邸は少し縦のラインが強調されていたり、ランゲ邸のみ北側2階の廊下のボリュームを少し下げて室の北側にもスリット状にサッシが取付けていたりする。また、南側もプロポーションや窓の個数などが異なる。
 
1階のプランを見ると、2棟とも5つの部屋が廊下を介さず団子状に密集し、北側に面して配置された一番大きな部屋にその他の4つの部屋が南側に雁行しながら連なり、ミース独特の流れるような空間の連続性を垣間みることができる。各部屋の出入口は天井まで切り取られ幅広の開口になっていて、隣の部屋とつながっていく。レンガの外壁に開けられた窓も天井まで切り取られた大開口。両開口とも木製の額縁で縁取られていることもあり開口からの景色がピクチャレスクなものとして見えてくる。これらの開口部が部屋越しに連続して見えてくることでこの効果がいっそう高まっているように思える。1階開口部のサッシは丸ごと地下に引き込まれる機構になっていたので、全開にするとなおさらその印象は大きくなるのではないだろうか。2階は一転して寝室が廊下につながっているというシンプルなプラン。写真のように3つの開口部が連続して現れる不思議な部分があり、開口部中央の額縁の取り合い部分が有名な「十字柱」に見え、「十字柱」の起源かもしれない、と思った。
 1,2階外壁の大開口だが煉瓦レンガ造にしてはかなりのスパンを飛ばしている。この大開口を実現するためにレンガ造の補強として鋼製の梁を使用し、耐力壁も鋼材で作るという工夫がなされている。構造設計者エルンスト・ヴァルターも苦労したという複雑な構造ではあるが、そのことで、レンガ造なのに重さを感じさせないその当時には目新しいモダンな建物を実現できたのではないだろうか。
 

内外装
外壁/
概要
階数/地上2階、地下1階
構造/鉄骨造+組積造

 
   

google mapより引用

 
google earthより引用

より