T room
edited by takuya yamada
オーストリア
ルーファー邸
住宅
設計:アドルフ・ロース
ウィーン 竣工1922年
最後はルーファー邸である。
敷地は閑静な住宅街の中にある。まず、建物を最初に見た印象はマッス(量塊)でコンパクトなボリュームが廻りの環境にうまくとけ込んでいるというものだったが、続いてファサードをよく見てみると壁面のレリーフ、開口部の開け方など、ただならぬものを感じた。
ルーファー邸が建てられたのは1922年であり、ラウムプランの考え方が住宅にも現れ始めた時期ではないかと思う。ラウムプランの概念は多岐に渡るため全体像をここで細かく説明することは出来ないが、建築をより良くするために積極的に空間を立体として思考し、組み立てることである。ファサードを見てただならぬものを感じたのはこのラウムプランがファサードに間接的に(!)影響を与えていることが見て取れたからではないかと思う。
ルーファー邸のプランの特徴は天井が高い音楽室と天井が低いダイニングが床をスキップさせてつなげているところである。スキップを何らかの方法で立面に表すこともできるだろうが、あえて窓やレリーフの高さを合わせていて、その様子はうかがえない。床の段差と共に、階段が一筆書き的に4階までつながっていて、道路側の一番大きな窓は階段上部に開けられた窓である。床をただ単にスキップさせるだけでなく視線、動線の流れも同時に考慮した空間、窓の配置となっているが、外部から見るとこの複雑さは全く分からず、むしろわざと分からなくしているようだ。
建物は4階建てであるが1階天井のあたりと4階の窓上のみに横目地が付けられており、スケール感覚も狂わされる。また、3階の窓が天井合わせで開けられているため4階窓と近い位置にあるのが効いている。
ロースの4つの住宅は外観だけしか見学できなかったが、どれも魅力的に見えた。それはロースの「建築」に対する思考が外観からただならぬものとして感じ取れるからかもしれない。ロースの建物の魅力は内部を見ることにあるかもしれないが、外観から内部をイメージすることでよりロースの思考を理解しようと挑戦する楽しみがあった。